READING
よみもの
未来へのバトン ~アンカンミンカン富所哲平~
みどり市が誇る古き良き芝居小屋。
二階席の、とある窓から見える高津戸峡の眺めが良いから、「ながめ余興場」。
梅沢富美男を育てたらしい。
美空ひばりも歌ったらしい。
アンカンミンカンも何度なく爆笑漫才ステージを。
どうやら将来の眺めも良いに違いない。
コロナが騒がれるちょっと前、そんな「ながめ余興場」でカラオケ大会を企画・主催しました。
並み居る歌ウマさんを制して、初代のチャンピオンに輝いたのが、当時、高校一年生だった前原百花さん。
そんな前原さんも、今は大学生。
先日のこと。アンカンミンカンが司会を務める、群馬テレビの看板番組(自称)「カラオケチャンネル」に、前原さんが歌いに来てくれました。
彼女はいま、ミュージカル女優の夢を追いかけているそうで、それを伝えるために、歌いに来てくれました。
彼女が言いました。
「あの日があったから、私はいま、ミュージカル女優を目指しています!」

昭和の経済の盛り上がりに乗せられる形で、もっと近代的な施設への建て直し案が浮上したものの、先人たちの「残す、守る、つなぐ」という意志があって、いまに受け継がれる「ながめ余興場」。僕が20歳の成人式に、ながめの舞台を踏むことができたのはそのおかげ。それが郷土へのルーツとなって、地元で活動する道を進むことになり、受け継がれる意志に導かれるようにカラオケ大会が開かれた。
ただやるだけじゃ意味がない。歴史も、意志も、想いも、受け取れる限りを乗せて精一杯に走り切る。すると、バトンはいつだって知らぬ間に、ちゃんと未来につながれていくのかもしれない。

